上海(5) 2003.9.17〜9.20

半年ぶりの上海への再訪。今回の印象は、変化と増加がキーワード。新旧と貧富が混在しながら、一層の都市化が進む。

南京西路で見かけたオブジェ

【一日目】

サーズの余韻


福岡を3時半に出発し、現地時間で4時に上海に着いた。日本からだけでなく、世界各地からの便が集中しているせいか、10近くある入国審査はどこも長蛇の列。ざっと見て1000人以上の大混雑。今回、印象に残ったのは、健康自己申告書のチェック。これまでは、置かれた箱に投げ込むだけで良かったが、検査官がきちんと記載されているか、チェックする。記入漏れを指示される人も多かった。これもサーズ騒動のの余韻?上海は、ほとんど患者は出なかったようだが・・・。


逸和龍柏飯店


渋滞のせいもあってホテルまで1時間近くかかった。宿泊は、94年にも利用した逸和龍柏飯店(旧上海日航龍柏飯店)。近くに虹橋空港があり。浦東新空港ができるまでは、ここが国際空港だったが、今は国内線の空港となっている。逸和龍柏飯店は、その空港利用客を見込んだ四星ホテルで1987年にできた。日本人客が多いせいか、フロントだけでなく、ベルボーイも日本語を話す。難点は、郊外にあるため、市内から時間がかかること。それに周辺は高級住宅地はあっても、歩いていける商店街や公園はない。ある意味で、陸の孤島。一番近くにある繁華街・古北まではタクシーに乗らなくてはならない。中国に初めて来た同行者が街まで出るのは億劫だというので、ホテルのレストランで夕食を取った。なんと、二人で440元あまり。その後、ホテル内にコンビニがあったのでビールを買ったが、夜の時間がもったいない。

ホテルに飾られていた絵

【二日目】

公安(警察)に怯える


代表的な観光地のひとつ、外灘で、オメガの時計(当然、偽物)を売っていた。要らないと言ってもしつこくついてくる。全く買う気はなかったが、いろいろなデザインの時計を出してくる。そのひとつを手にしたとき、男が自分から数メートル離れた。返そうとすると、ちょっと待てという仕草。振り向くと、同行者の横で、別の男が土産用エプロンを数枚持って立っている。私服の公安だ。売買の様子を確認し、現行犯でエプロンを没収したようだ。公安が離れた後、売っていた女は残った2枚を手にして茫然としている。同行者は、可愛そうに思い、その2枚を100元で買った。


襄陽服装市場でも・・・


前回と同様、襄陽服装市場を訪れると、次々と声をかけてくる。無視して歩いていると、そのうちの一人が「アパートにいいものがある」と覚えた日本語で誘ったので付いて行った。雑踏を抜け、小汚い二重ドアの狭い一室へ。日本人らしき先客たちが、偽ブランドのバッグや財布を物色している。自分も「友達価格」でプラダのバッグを土産に買った(店は、鴨が来たとほくそえみながら、十分利益を出しているだろう)。店を出ようとしたとき、二人の男がドアを開け、周囲を確認してOKと言った。店を出て、男たちは一般の通りまで付いてきた。以前、ここでの抜き打ち捜査の様子をテレビで見たことがあるが、公安に怯えながらも、彼らは商魂たくましい日々を送っている。ちなみに、売春を斡旋すると、10年の禁固刑とのこと。


美仕唐納滋(ミスタードーナッツ)


襄陽服装市場の道を隔てた向い側に、ミスタードーナッツがある。アイスコーヒーが18元。結構、客が入っている。マック、ケンタッキーフライドチキン、ピザハットなど、ファーストフードの店が増えてきた。アルバイトの時給は、5元。ちなみに、店舗数が増え続けるスターバックスは、中国語で星巴克(xing1ba1ke4)ということを知った。


ガイドの給料、5000元

去年、大学を卒業したガイドのSさんの給料は5000元。大卒者の初任給が1000元、上海市民の平均給料が2000元との事なので、結構高い。今年はサーズの影響で三ヶ月無給だったそうだが、去年の観光シーズンは、案内した店舗からのバックマージンで一万元を越えた。それでも彼の表現によると、「以上不足、以下有余」。上海の観光客は日本人が圧倒的に多く、次はヨーロッパ人。


東台路骨董街

道をはさんで、両サイドに200メートル位、骨董品店が並んでいる。初めて行ったが、掘り出し物というものはなかなか見つからない。一人で茶器などを見ていると、同行者とガイドのSさんがいないのに気づいた。通りに客はほとんどいないし、問題ないだろうと「看一看」(看てるだけ)を続けた。2、30分して二人が戻ってきた。1m四方のチベットの曼荼羅の布を12枚手にしていた。同行者は店主との交渉や店内の様子を振り返り、一万円近く払ったが、大いに満足している感じ。要は、本人が気に入ったかどうかどうかだ。

ほとんどが偽物やがらくた? じっくり見れば、掘り出し物が見つかるかも・・・

渋滞がますますひどくなっていく


夕食のため、浦東地区に移動した。黄浦江の地下トンネルは渋滞。なかなか前に進まない。高速道路もそうだ。トラック、バス、タクシーだけでなく、一般車両も以前に較べて随分増えてきた。上海市民の乗用者購入で毎月2000台ずつ増え続けている。駐車場確保や排気ガスの問題も含め本格的な車社会の到来だが、渋滞がますますひどくなっていき、事故や立ち往生の風景が日常茶飯化するのは間違いない。

太貴了(高すぎる)


浦東の黄浦江に面した海鴎亭で夕食をとった。対岸は、ライトアップされた外灘の古い建物群。数百席の広いレストランに観光客が訪れる。1階は、茶坊と土産物屋。茶器を見ていると、東京に留学経験のあるという店主が声をかけてきた。ここでも買う気は全くない。市内の他の専門店に較べて、三倍くらいの値付け。日本人観光客たちは、それでも買って行く。こういった観光客相手の暴利をむさぼる商売は、これからも当分続くだろう。

高すぎるといえば、新天地で飲むと200元以上とか。金持ちであれば、別にどうって言うことはないが・・・。


ビール付きの昼食と夕食。旅行代に含まれる。

【三日目】

歩くに限る


三日目は二人だけの自由行動。同行者が針灸の道具を買いたいというので南京東路の薬屋に案内するつもりだったが、勘違いして上海商城でタクシーを降りてしまった。ここには、あのリッツ・カールトンホテル。一度は泊まって見たい高級ホテルだ。上海商城を出て、地図を片手に歩き始めた。しかし、なかなか目的地につかない。道行く人に南京東路はどっちの方向かと尋ねる。後で気づくと、地下鉄二駅分、歩いたことになる。。しかし、迷ったおかげで、上海の古い建物である里弄(リーロン)に入ったり、上海美術館の場所を知ったり、地理の感覚が分かったり・・・。やはり、旅行は歩くに限る。


古いアパートの一角で、おかずを売っていた

南京東路


平日なのに人出は多い。すでに見慣れた光景だ。針灸の道具を買い終え、大通りから少し入った店で昼食。牛肉麺一杯11元。同行者は初日のホテルの夕食の値段に憤慨しながら、美味しいと言った。


昼食で食べた牛肉麺。結構、ボリュームがあった。

CDが安い !!

南京東路沿いにある第一百貨店に入り、CDを買った。今話題の「女子十二楽坊」の「奇跡」(2枚組が58元、約850円)。日本で買うと2500円近くはするだろう。他の一般的なものは、38元くらいか。土産のレパートリーがひとつ増えた。ちなみに、若者たちに人気ある歌手のCDが10元(これはコピー商品)。

上海博物館


時間があったので、小雨の中を近くの人民広場にある上海博物館に向かった。どこから出てきたのか、ところどころで、通行人たちに一本10元で折畳式の傘を売っていた。博物館の入場料は20元。同行者は、最初余り期待していなかったようだが、見終ると「大変良かった」と感想を言った。


タクシーが捕まらない


途中まで、地下鉄に乗って帰ろうとしたが、人が多すぎるので嫌だということで、タクシーで帰ることにした。小雨の中、数百メートル歩いたが、全くタクシーが捕まらない。沢山走っているが、全部、乗車中だ。結局、大きなオフィスビルまで行き、並んで乗ることができた。タクシーはとっくに庶民の足で、運転手たちにとっても、昔に較べて旨味のある商売でなくなった。


高層オフィスビルが、雨後の筍のように増えつづけている

古北カルフール

夕方、ホテルに着いた。夕食はタクシーで古北の街へ。ここも大渋滞。四方から車が集まってくる。北京のバスはおんぼろで社内は無灯。しかも超満員だったが、上海は新しいバスだった。

フランス系スーパーのカルフールで先に買い物をした。外国人が多く住んでいることもあり、品揃えは十分。タバコ、茶、ビール、老酒などを買い、1階のフードコートで夕食。ユニフォームやサービスは日本と同じ。たいしてうまいと思わなかったが、どの店も結構、客は入っている。古北は、日本人も多いせいか、このフードコートの一角に吉野家もあった。


【四日目】

浦東空港


帰国。12時前の出発だったのでゆっくりできた。これがJALではなく、中国系航空会社であればもっと早い出発時間だったはずだ。出国手続きを終え、搭乗まで時間をつぶす。免税店は歩合制のためだろう、店員たちの売り込みがしつこい。施設は立派だが、サービスの点では、まだまだ発展途上を再認識した。


浦東空港内売店

上海は、今や先進国際都市?


上海商城にあるリッツ・カールトンや浦東のグランド・ハイアットなどに代表されるように、上海は今、世界の高級ホテルが乱立し、高層オフィスビルも増え続けている。マンションや自動車購入が具体的な生活目標になり、若者たちのファッションは垢抜けし、街もきれいになっていく。庶民は先進国の文化やシステムを享受し、その生活水準は確実に向上している。金融の中心は香港から上海へ、そして、浦東新空港はハブ空港へ。上海は、このまま北京オリンピックや上海万国博覧会まで順調に歩みを進めるか。

一方で、WTO加盟後、元の切り上げが俎上に上っているが、この発展は、やがて訪れるかも知れないバブル経済(?)崩壊への一過程なのか、とも考えてしまう。
外資投入で成長してきた中国の今後は、世界経済と連動して、興味深い。(完)

The trip to China
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