上海(1)・杭州  1994.2.18〜2.21

一言でいえばエキサイティング。そこで見たものは人々の生きるエネルギーと無秩序、そして混沌だった。

杭州駅の出稼ぎ労働者たち

上海と杭州に行ってきました。なにせ初めての訪中で、言葉は不自由、途中から時間も限られた一人旅、入門的な情報しかありませんが、とりあえずご報告させていただきます。
 
1.街の印象

  上海虹橋(ホンチャオ)空港から市内まで車で約30分(?)。道路の両側には2階建ての古びたレンガ作りの住宅や商店が続き、あちこちの窓に無造作に洗濯 物が翻っています。しかし、その遠方には外資系と思われる高級ホテルや高層のオフィスビル、建設用の大型クレーンなどが見え、「貧しさ」と「近代化に向け た経済成長」がミスマッチしています。イメージはモノトーン。
 
2.交通事情

(1)車・自転車
 片道二車線(車は右側通行)にニ輌連結のバ ス、サンタナらしき小型のタクシー、トラックなどが走っています(新車はなく、いずれも汚れた中古車)。大きな交差点に信号機は数えるほどしかなく警察官 による交通整理がされていますが、そこから少し離れると車の直前を自転車や人間が平気に横断。交通ルールを守るという意識は全くないようです。そのために 車は常に警笛を鳴らしっぱなし。喧騒と土ぼこりと雑踏です。庶民の足は自転車が主流。5〜10台単位で走っています(かつての台湾と同じ)。オートバイは みえません。
 
(2)駅周辺
  一番エキサイティングだったのは、上海駅や杭州駅の数千人とも思われる群集。1年間で最も人々が移動する春節(中国の正月)後ということもあって、まさに 圧巻です。かつて毛沢東が中国の人口の多さを「帝国主義者が攻めてきても、我々中国人民の海の中で溺れ死ぬであろう」と形容したように、送迎や列車に乗る 人々、ずた袋を背負った盲流(地方から都会に仕事を求めてやってきた人々)たちであふれています。

 杭州駅
(3)列車
 列車は2種類。軟座(ルアンズォ、外国人や特 別な許可を得た中国人しか乗れない。いわゆる座席指定のグリーン車)に比べ、硬座(インズォ、たくさんの荷物を抱えた人たちで満員)の待遇は悪く汚い印象 を受けました。待合室もこの2種類に分けられ、前者が広くゆったりしているのに比べ、後者は少しでも早くいい場所を取ろうと、長蛇の列が改札が始まると同 時に一斉に走り出します。たまたま軟座に潜り込もうとした若い中国人男性がいましたが、挙動不審ですぐ見つかり、駅員に連行されました。
 利用した列車は、出発が1時間20分遅れたにもかかわらず、説明は一切なく、いつものことで客たちも鷹揚なのか、もともとルール感覚がないのか、あるいは契約社会として未熟なのか、ビジネスの点で不安を残します。(上海〜杭州はガイドを1日5,000円で依頼)
 
(4)タクシー
 少しずつ庶民の足になりつつあるようです。降 車とともに次の客が乗りこみます。中古の赤いタクシーですが、社内はあまりきれいとは言えません。運転席は防犯目的か、強化プラスチックで囲んでありま す。運転も少し乱暴。現在、タクシーの運転手は高級取り、一般労働者の3倍から5倍を稼ぐそうです。

3.ファッション

 2月ということもあって、全体的には黒やグ レー系統が多く、個性が感じられません。時装設計師(ファッションデザイナー)やモデルは将来有望な職種のひとつと思われます。多少カラフルな服を着てい るカップルもいましたが、今のところ日本の比ではありません(さすが人民服は、いまや老人の一部を除いてほとんど見当たりません)

 
4.繁華街

(1)南京東路(上海随一の繁華街)
 メインストリートの両側には、赤や黄色のけは けばしいネオンが無節操に輝いています。しかし、通りから横の路地を1歩入るとすぐに闇。電気の絶対量不足を感じます。全体的にエネルギー、道路、鉄道な ど基本的なインフラの整備は、まだまだこれからといったところです。そして、ここも相変わらず雑踏です。
(2)外灘(ワイタン、バンド)
 昔の租界地。官公庁やホテルなど昔風の西洋建 築物が黄浦江に沿って数キロ続いています。ガイドブックには「中国の山下公園」と表現してあり、観光客も多いようです。夜陰に紛れて抱き合っているカップ ルもいました。夜7時になると、建築物がライトアップされ、異国情緒を醸し出します。黄浦江の対岸が現在注目されている新浦東(プートン)地区で、建設現 場に通う労働者の数が1日5万人(?)とのこと。確かに、高いテレビ塔や大型クレーンが見えました。
 

西洋建築物

 
5.情報

(1)テレビ
 三ツ星以上のホテルでは、国内のテレビ局が 3〜4局、他に香港テレビ、衛生放送(NHK1,2、Wowwow、CNN等)をみることができます。ニュース、中国の時代劇、スポーツ中継、歌番組な ど、ほとんど日本と変わりありません。日本のトレンディドラマも吹き替えで映っていました。一般的なエンターテイメントやバラエティはほとんどありません (ワイドショーもなし)。また洋画で女性の裸も出てきます。これは、ホテル利用客の大半が外国人や華僑であるため、庶民には直接的な影響がないと判断して いるためでしょう。多分、番組のチェックはあると思います。テレビ普及率は確認していませんが、経済発展とともに増加していると思います。
(2)新聞
 地元の英字新聞も含め、4〜5種類あるようです。タブロイド版で8ページ。人材募集や商品広告も見えます。
(3)雑誌
 国営の新華書店が沢山ありますが、雑誌らしきものは見つけることができませんでした。また本の在庫量、ジャンルも日本の本屋に比べ貧弱です。紙質も悪い。
(4)CM
テレビCMはあります。電気製品、薬、化粧品、インスタントラーメンなどのCMを見かけました。映像的には、いまひとつの感がします。
(5)電話
 日本のような電話ボックスは見当たらず、ホテルか指定された場所でしか使えないようです。国内の長距離電話は呼び出しまで時間がかかる可能性が高いとのこと。日常化するには、まだまだ時間がかかりそうです。
(6)値段
 最近、人民幣(レンミンピー)に統一され、兌 換券を扱う闇両替屋は減ってきたとのことです。ホテルで両替すると、手数料込みで一万円が約800元。一元=13円の計算になります。92年11月時点で 20元でしたので、随分上がっています。Ex.タクシー代14.4元(5Kmまでの基本料金)、列車代(上海〜杭州、168元、ただし外国人は2倍、中国 人ガイド分も)、豫園の茶館・湖心亭18元(緑茶)
 給料 合資企業 800元〜1000元、教師500元、タクシー運転手(高所得者)3500元、添乗員3000元(日本語のできるガイド、チップ込み)元

 
最後に

 
  初めて訪れた中国の印象を一言で言えば、エキサイティング。目に入るものそれぞれが興味深く、好奇心をあおるものばかりでした。改革開放政策の下、人々の 欲望が本格的に目覚めたばかりで、現在の日本と比べると経済力の面で劣るものの、21世紀には飛躍的な発展をする可能性を十分に秘めていると感じました。
  驚いたのは人々の活力。走っているタクシーの直前を平気で横断して行く自転車や歩行者、上海駅や繁華街の雑踏・・・。無秩序や混沌のエネルギーが感じられます。
  美味しいものも沢山食べました。特に豫園・緑波楼で食べた12種類の点心は全部食べきれず、途中で満腹になりました。隣接する湖心亭の茶もくつろげました。ただ今回は時間がなくて、期待していた上海蟹を食べることができなかったのが心残りです。

湖心亭
 
 「上 有天堂、下有蘇杭」 天に極楽があるように、地に蘇州・杭州あり・・・。 緑茶の名産地でも知られる杭州の旅も思い出深いものとなりました(ここは、ぜひもう一度行きたい場所です)。列車の出発が遅れたにもかかわらず、なんら説 明もなく時間感覚の国民性の違いを感じました。約3時間の車窓から見える風景はほとんど田園風景で変化がなく、前日の南京東路のけばけばしい赤や黄色のネ オンとは対照的なモノトーンでした。杭州駅に着くと群衆の喧騒に圧倒され、翌日の西湖の静寂と、ホテルの部屋にさりげなく飾ってあったねこ柳に心が休まり ました。(完)

龍井茶でも有名な杭州・西湖。 ここはいい!!
The trip to China
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